「韓国の人の環境問題に対する考え方について」
W040125 川端 佑季
■はじめに

今年の夏休みに韓国に短期留学に行った。3週間の間韓国の生活環境の中で生活した。学校にも通い、放課後や休日には市街地にも出かけた。韓国の首都ソウルの市内はとても慌しく日本の繁華街とよく似ていた。日本に多くあるコンビニも韓国でも多くあった。日本に比べると数は少ないように思うけれど、同じ会社のコンビニがあった。日本で生活している時と同じように韓国でもコンビニにお世話になった。日本のコンビニは時間帯にもよるけれど、たいていは人が数人はいて人の出入りが盛んであるように思う。しかし、わたしの行った韓国のコンビニのほとんどは日本のコンビニよりも人が少なく、静かだった。日本のコンビニと韓国のコンビニとの大きな違いを感じたのは、レジ袋の使用の仕方だった。日本のコンビニでは、ほとんどの場合買った商品をナイロン製のレジ袋に入れてくれる。商品が少ない時に限っては「袋いりますか?」といわれる。袋に商品を入れない場合は商品が少なくて、客側が袋を断った場合である。しかし、韓国のコンビニでは何を買っても商品をナイロン製のレジ袋には入れてくれなかった。日本でもコンビニを頻繁に利用している私にとって韓国のコンビニでの経験にとても疑問を持った。

韓国での生活も慣れてきた時に思い切って「袋に入れてください」と言ってみた。そうすると、店員は、「50W」といってきた。韓国のコンビニではレジ袋は有料化されていたのだった。日本でもスーパーなどではレジ袋を有料化しているところはある。でも、コンビニでは有料化はされていない。そこで、私は韓国という国のなかでナイロン製のレジ袋に人々がどのような意識を持っているのかという事を主に、韓国の人の環境問題に対する意識を追求していきたい。そこでまず、私の考察を述べたい。それから、フィールドワークから韓国の人の意識を探りたいと思う。そして最後に韓国の人の環境問題に対する意識は、私の考えていたものとどのように違っていたのかを考え日本で有料化する事について考えたい。


■問題提起・予測

韓国のコンビニでは、韓国の人がレジ袋を使用している光景もほとんど目にしなかった。韓国の人々は環境問題に意識が高いのだろうか。レジ袋はナイロン製のものがほとんどである。ナイロンは日本をはじめ世界中で不燃ごみとして、処理方法が問題視されている。韓国は、日本よりも早く不燃ごみを出さない為に国民が利用するコンビニでも、有料化という手段で努力しているのだろうか。あるいは、レジ袋を使用する習慣はなく、レジ袋に変わるものを自分で用意する習慣があるのだろうか。私はどちらとも考えられるように思う。韓国で住んでいた下宿先ではごみの分別がしっかりしていた点から韓国政府は環境に対して勤めているといえ、韓国の人は環境問題意識があると考えられる。レジ袋でなく自分で袋を用意するという意識や習慣が浸透しているとも考えられなくはない。それに加え、レジ袋の有料化が簡単にできるものではないとも思う。日本でも有料化は考えられて実施も進んでいるが、コンビニで実施することは困難である。日本人の感覚としては、コンビ二は名前の通りスーパーよりも便利なものである。コンビニの便利で利用しやすいという特権がレジ袋の有料化で損なわれてしまう事になりかねないと思う。そんな事をコンビニ産業が簡単に行うことができるとは思えない。反対に韓国の町並みがあまりきれいではなかったという印象から意識をあまり持っていないとも考える。レジ袋に対してはコンビニは便利である事が特権であるから不便さをかんじているように思う。いずれにしても韓国では、レジ袋の使用率が少ないと考えられる。

※調査方法・対象
※実際韓国の人はレジ袋についてどのように思っているのかをインタビューした。
  インタビューについては以下の通りで行った。
   日時:12月14日
   場所:瀬田キャンパス内
   対象:韓国から国際文化学部への留学生、女性1名
   内容:韓国でのレジ袋の有料化、実情について
       日本での生活でのレジ袋について
       コンビニの利用にたいする意識について


■結 果

私 : レジ袋を使用しないのはいつ頃からですか?
留学生: 10年近く前に当時の大統領が定めた法令によってから。
私 : 韓国ではコンビニでレジ袋が有料なのは当たり前の事なのですか?
留学生: 今ではごく当たり前の事。韓国では、あまりコンビニを利用しない。
私 : レジ袋はその都度購入する事になるけれど、みんなたいていは購入するのですか?
留学生: コンビ二はあまり使用しないから、レジ袋も買った事はあまりない。スーパーでは人それぞれで、レジ袋を購入する人もいるし袋を持参する人もいる。袋が必要なら購入するし、あらかじめ持って行くこともある。
私 : なぜ韓国では、コンビニをあまり利用しないのですか?
留学生: コンビ二は値段が高いから。
私 : 韓国でレジ袋が有料化されて、通常使用されていないことに不便を感じていますか?
留学生: 当たり前の事になっているから特には感じないけど、今まで不要だったお金が必要になる事になるから、そのお金がもったいないと思っている。
私 : では、日本に来てコンビニ、スーパーのどちらでもほとんどレジ袋が使用されているけれど、どんな風に思いましたか?レジで、「レジ袋いりません。」といいますか?
留学生: 少ない買い物の時、例えばペットボトル1本やその程度の時は「いいです。」という。普通の時はレジ袋をもらって自分で持って行く事はしない。
私 : 日本のスーパーで、レジ袋を余分に入れてくれる事があると思うけれど、その時はどうしていますか?また多めにくれることをどう思いますか?
留学生: 多くくれたレジ袋は、ごみ袋などに使ったりしている。韓国では、自分で買うから必要な分のレジ袋しか使用しない。日本で余分にもらう事に特に何も感じない。
私 : 日本ではトレーや牛乳パックの回収や、再利用、再使用などが、スーパーで行われている。韓国において、リサイクルや環境問題を意識させるような事は日本より多いと思いますか?
留学生: 日本も韓国もそんなに違いはないように思う。でも、生活面での規制は韓国の方が厳しいと思う。韓国では、ごみの分別が本当に厳しい。曜日によってごみも分けなければならないし、生ごみ、紙、ペットボトル、缶など全て規定のごみ袋に入れて決められた曜日に出さなければならない。
私 : レジ袋の話に戻るけれど、もし日本でも全国的に韓国と同じようにレジ袋が有料化になれば、日本人はスーパーでもコンビニでもお金を出してレジ袋を買うと思いますか?韓国の人のように、お金がもったいないという意識が生まれると思いますか?
留学生: もちろんもったいないという気持ちになると思う。レジ袋を買うか買わないようになるかは、分からないけれど使用する枚数は減ると思う。


■考 察

インタビューの結果私が予想していた事と違う考えがあった。インタビューの質問内容順に違いを見ていく。

まず私がコンビニで知ったレジ袋の有料は、韓国の政府が決めた法令によるものであった。韓国の政府がなぜ有料にしたのかというと、環境問題を意識して消費量の減量やごみの減量を目的に決めた。金大中大統領の時代に制定された法令の一部に組み込んだものであった。しかしこの法令について今回のレポートでは省略したい。韓国の政府が決めたものであるから、韓国の人々が習慣的にレジ袋を使用していなかったといえないように思う。そうだとすると、韓国の国民は法令によってレジ袋を使用しなくなったと考えられなくもない。

コンビニでの有料化は当たり前かという質問の答えには少し驚いた。韓国の人々はあまりコンビニを利用しないのだ。日本人である私は私たちがそうであるように韓国人もコンビニを便利でよく利用するものだと思い込んでいた。私がコンビニでレジ袋に入れてくれない事、レジ袋が有料である事がそもそも韓国の人にとってはたいしたことでは無かったのかもしれない。

コンビニもスーパーも含めレジ袋はたいてい購入する事になるけれど韓国の人達はいつも購入しているのかという問いには、人それぞれであるという返事が返ってきた。確かに購入する、しないはその人次第である。一人の人に聞いただけでは判断しかねる。でも人それぞれという事は、習慣として染み渡っているとはいえないと思う。昔から韓国の人達は袋を持ち歩く事をしているという習慣はなさそうだ。

韓国でレジ袋が有料化になった事で不便を感じるかという質問に対しては、特には感じないと答えが返ってきた。確かにレジ袋が、無くなった訳ではないからそこまで不便であるとは感じないのだろう。しかし、別の意見も返ってきた。レジ袋にお金が必要となった事で余計なお金が必要となる事にもったいないと思っていると言っていた。確かに、レジ袋が無くなってはいないけれどお金が必要となると金額が安くてももったいないと思う。日本人もそう思うだろうか?

日本ではレジ袋がカゴに入れられることが多いが、買い物した時にはどのようにしているのかを聞くと、日本人のたいていがしているようにレジ袋をもらっていた。韓国ではレジ袋を購入するからもったいないと感じているからといって、日本においてレジ袋を断ったり自分で持っていったりはしていないことが分かった。

1つ前の質問の続きに余分なレジ袋についての考えも聞いてみた。特別、余分なレジ袋をいらないとか不要であるとは思っていなかった。しかし、韓国と日本とを比べると、日本人よりも韓国人の方がレジ袋を使用していないと考えられそうな答えが返ってきた。つまり、韓国の人は買い物をしてレジ袋を購入する事があると、最低限の袋だけを購入して持ち帰る。でも、レジ袋が無料である日本において日本人は、自分の買った商品の量に関係なく自然にレジ袋を余らせて持ち帰っている事が韓国人よりもあるということだ。その結果、自分でレジ袋の使用を制限しているのと、いないのとの違いが韓国人と日本人に現れていると思った。

最後に、日本でも韓国のようにレジ袋が有料化になれば、どうなるのかを尋ねた。レジ袋が有料化になれば日本人も、レジ袋に払うお金がもったいないと思うだろうという返事が返ってきた。レジ袋を買うか買わないようになるかは、人それぞれで分からないけれど使用枚数は減ると思うとも言っていた。この事について私も同感だ。でも、コンビニ利用が多い日本人がコンビニを利用する時にはレジ袋が有料である事に対してレジ袋のお金がもったいないとは感じないとも思う。先にも言ったけれど、コンビニは便利である事が第一である。レジ袋にお金がかかっても、コンビニで利用するレジ袋の量はあまり変わらないと思う。


■改めてフィールドワークをした結果

以上全ての内容を踏まえて韓国人のレジ袋、環境問題に対する意識が分かったとは言いがたい。やはり韓国人1人だけへのインタビューであって、それだけでは判断できないからだ。そこで私は韓国の商店街がある大阪の鶴橋に行き、観察、インタビューをしてみた。

友人などに聞いていた通り韓国の商店街の風景と同じ光景が見られた。主に、キムチなどの生もの、民族衣装などの店が目立って多かった。韓国語で話している人たちの声も聞けた。キムチなどを売っている店の女性2人にナイロン袋について、私が留学生に聞いた話を元にインタビューをしてみた。しかし、その女性は2人とも韓国のレジ袋についてやゴミの分別法については知らなかった。なぜなら日本で生まれ育ったり、10年以上も日本で暮らしていたからだった。結果、鶴橋にいるすべての韓国人については言えないが、商売をしている人は日本に住んでいる期間が長く韓国の生活については、事実を断言できないのだと思う。鶴橋は韓国のような町ではあるが、そこの暮らしは韓国とは違った。このことから、今回のレポートでは留学生からのインタビューから得たものを考えたい。


■結 論

韓国の人はレジ袋が有料になった事に対して実際にはそれほどの不便さを感じていない。しかし内心では、レジ袋代が必要になった事に対してもったいないと感じてレジ袋代の節約に勤めていると感じられる。それが、環境問題意識に繋がっているかはよく分からない。レジ袋の代金がもったいないのか、レジ袋の量(枚数)がもったいないのか。こう聞かれても韓国では枚数も代金も比例するものであるから、どちらとも言えないだろう。しかし意識があるか無いかは別として、結果としてレジ袋(ナイロン製袋)の消費量の減量に繋がっているといえるように思う。韓国人の意識を考える時どうしても日本人の意識が入ってしまう。日本でもしレジ袋の有料化が全てのスーパー、コンビニなどで行われると日本人のレジ袋に対する意識は変わるのかを最後に考えて終わりにしたい。

日本で有料化が実施されると、スーパーなどの大きな場所ではレジ袋の持参が多くなるように思う。反対にコンビニ業界では、相変わらずレジ袋を使用し続けるように思う。コンビニ=便利という考え方から、わざわざ袋を持って行くようにはならないと思うからだ。日本人が韓国人のようにレジ袋料金がもったいないと感じるかどうかは、レジ袋の使用者の年齢や性別、利用場所、もちろん料金にもよると思う。レジ袋に対しての意識は少しは変わるとは思うが、それほど大きく変わる事はないように思う。


■さいごに

韓国の人の環境問題意識を考えるにはもっと多くの資料やフィールドワークが必要だ。もっと多くの韓国からの留学生にアンケートを行うことが望ましい。また、今回のフィールドワークで鶴橋に行った経験から、在日韓国人と韓国人の考え方の違いや、日本人に対しても、アンケートをとる事も今後挑戦してみたい。今後韓国のさまざまな事に関わっていく際にもっとたくさんの情報を得たい。そしてもっと信頼性などの高いものになればいいと思う。


■参考文献
 ・「韓国の日常世界 : 生活・社会・文化の基礎知識」 任栄哲著 2004年 東京KKベストセラーズ