斎藤文彦
国際文化学部教授 国際開発論A・B担当
研究テーマ 国際開発論・国際協力論

 豊かな暮らしに安住していては分からない。地球的規模で真剣に環境問題を考え、できることから行動を起こすことが大切です。
  リモコンのボタンを押せばクーラーが入る、蛇口をひねれば水が出る、コンビニに行けばいつでもおにぎりが買える……私たち日本人は、そんな便利な生活を当 たり前のように享受しています。
 一方、アフリカの貧しい国々では、水を汲むために毎日6〜7時間もの労力を費やしている。あるいは電力事情が悪いため、日常的に停電が起こ るなど、きわめて不便な生活を強いられています。そんな不便な暮らしなど、皆さんは想像もできないでしょうが、ある意味ではこうした格差があ るからこそ、地球が成り立っていることを忘れないでほしいですね。
 もし世界63億人の人々が、先進国並みの豊かな生活をしたとしたら、地球はたちまち行きづまってしまうでしょう。たとえば私たち が使う紙の量は、世界の中で最も貧しい人々の77倍にも達します。アマゾンの人たちが自分たちが紙として使うための木を1本伐る間に、私たち は77本もの木を消費している。しかも私たちが使う紙の原材料は、ほとんどを輸入に頼っている事実も忘れてはなりません。
  環境問題を少しでも良い方向に導こうと思うなら、地球的規模で考えて、1人ひとりができることから行動を起こすことが必要です。たとえば私はクルマを使わ ず、自転車で大学に通っていますが、そんな小さなことでいいんです。自分1人が環境に配慮しても、周りの人は何もしないから意味がないと、最 初からあきらめてしまうのが一番いけないんですね。
 貧しい国の子供たちが生活を維持するために働かされ、学校にも行けないという「児童労働」の現状を知ったあるカナダの中学生が、問題解決の ために行動を起こした。最初は小さい運動でしたが、それが家庭から友達へ、社会へと広がり、やがて国を動かして国際的運動にまで広がった最近 の例があります。  今ならインターネットを活用して、もっと効果的に世界の人たちを動かすことも可能でしょう。2060〜2070年には世界人口が120億人に 倍増するといわれています。地球が取り返しのつかない事態になる前に、もっと多くのことを知り、その意味を深く考えて、積極的な行動に移して ほしいものですね。

国際文化学部に興味のある人たちへ──ONE POINTメッセージ

 これからの地球市民に求められるのは、何が問題なのかを地球規模でとらえ、どう対処すればよいかという自分自身の意見を持つことです。そ れを外国語で表現し、世界に発信して意見交換する。それが環境問題を考え、解決するうえでも大きな威力を発揮します。外国語と情報は、いわば 現代の「読み書きソロバン」です。国際文化学部での4年間で、そうした能力と資質をしっかり身につけていただきたいと思います。