
▼解決を目指す「社会課題」
安達 優さん
国際文化学科 2年生(大阪府 大阪桐蔭高等学校 出身)
安藤 心寿さん
国際文化学科 2年生(大阪府立清水谷高等学校 出身)
友永 雄吾准教授
国際文化学科
[専門分野]社会・文化人類学、オーストラリア先住民研究
オーストラリアと聞くと、コアラやカンガルー、広大な自然や温暖な気候をイメージするかもしれません。しかし、オーストラリアの背景には多彩で深い歴史と文化があります。1970 年代に英国からの移民を中心とした「白豪主義」から中東やアジアからの移民を受け入れる「多文化主義」へと転換し、現在では人口の約30%が海外生まれです。一方で、5 万年以上前から住む先住民の文化も根付いています。この研修では、移民や先住民の日常生活から社会の実態に関する学びを深めます。メルボルン大学やビクトリア大学で先住民研究者や学生との交流が行われ、地方都市では、先住民のためのチャイルドケアセンターや医療機関、国立公園を訪れ、先住民スタッフの支援活動を通じて、多文化社会の理解を深めます。
この研修のテーマは「出会い」、「気づき」、「変容」です。現地でのさまざまな出会いや経験によって、現代のオーストラリア社会における排除と包摂のプロセス、さまざまな民族間の共生の可能性までを探っていきます。また、日本の社会にも目を向け、自国における多文化・多民族共生についても考察を深めていきます。多文化共生への深い理解のほか、この研修には、研究の基礎力を養うという、もう一つの目的があります。事前学修や現地フィールドワークによる調査テーマの決定から実施、事後学修での発表やレポート作成まで、一連の研究プロセスを学ぶ機会でもあります。国際文化学ならではのリアルな海外体験を通じて、国際的な視野を広げる「鳥の目」と、国内の課題に向き合う「虫の目」、さらには時代の流れを読み解く「魚の目」を養うことができるのです。これらの経験は、今後の演習や卒業論文執筆、さらには、社会に出てからも必ず役立つと確信しています。
私たちは10日間のオーストラリア文化研修で、現地の先住民について多くを学びました。ビクトリア大学とメルボルン大学で、先住民の歴史や文化、現在の社会的立場などを学んだあと、地方都市に移動し、メルボルン大学がサポートする若者支援プログラム「ASHE」の学生たちとの交流をとおして相互理解を深めました。特に印象的だったのは、バルマ森林でのブッシュウォークです。先住民レンジャーから伝統的な自然とのかかわり方を学び、「aboriginal」の文字が書かれた看板を見たときには、レンジャーの「私たちは間違いなく存在している。そのことに誇りをもっている」ということばに深く感銘を受け、私も日本人であることにもっと自信をもちたいと思いました。また、先住民の間で代々受け継がれてきた、樹上有袋類ポッサムの毛皮を何枚も縫合して作成するガウンの物語やバスケットの編み物体験をとおし、オーストラリアに長らく根付いてきた伝統文化を肌で感じることもできました。
今回の海外研修は、狭い島国に住む私たちにとって、多文化理解の本質を考える貴重な機会となりました。学べば学ぶほど知識がつながり、多文化への理解が深まっていくのを実感しました。日本に住んでいる私たちは、自らの意思によって外国人とのかかわりを避けることも可能です。しかし、オーストラリアでは、異なるバックグラウンドをもつ人たちが共生しています。グローバル化と少子高齢化が進む現代において、この先日本も多文化国家になるかもしれません。自分のアイデンティティに誇りをもち、現代社会で活躍している先住民のように、私たちもこの国に生まれたこと、日本人であることに誇りをもちながら、他国の人々を尊重し異なる価値観を受け入れる、多様な視点と柔軟な思考力を養っていく必要があるでしょう。外側から改めて自国の良さを見つめ直すという意味でも、非常に有意義な経験でした。
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▼解決を目指す「社会課題」
山口 京夏さん
国際文化学科 3年生(静岡県立焼津中央高等学校 出身)
私がリトアニアへの留学を決めたきっかけは、学内でリトアニア人留学生のゲルダさんと出会ったことです。彼女を通じて、日本へ深い愛情をもつリトアニアという国の存在を知り「この知られざる国を知り尽くしたい」との思いで交換留学に挑戦しました。しかし、現地で衝撃を受けたのは、私自身が「無知」であるということでした。海外の学生は自国の歴史や世界情勢について豊富な知識をもち、活発に議論を交わします。特にウクライナ危機に対する現地学生の深い知識と理解は、遠い国の出来事としてとらえがちな日本人との大きな違いでした。さらに、現地の若者たちは政治にも熱心で、自国の将来について真剣に考え行動を起こしていました。一方、日本の若者の低い投票率に象徴されるように、私たち日本人は政治や社会問題に対して「関係ない」という態度をとりがちです。この「平和ボケ」から目覚め、世界の一員としての自覚をもたなければと痛感しました。
この気づきを活かすため、帰国後すぐに北海道ニセコでのグローカルインターンシップに参加しました。「雪ニセコ」では、多国籍な職場での業務に加え、地域の多文化共生に関する調査も行いました。特に印象的だったのは、ゴミ問題や生活習慣の違いなど、地域が抱える具体的な課題に対して住民同士が対話を重ねながらユニークな解決策を見出していく姿です。異なる文化背景をもつスタッフが互いの違いを受け入れ尊重し合う環境は、グローバル化が加速する社会での新しい働き方のモデルになるかもしれません。日本にいながら世界とつながるニセコの特徴的な社会のなかで、改めて積極的な異文化理解と情報発信の重要性を実感しました。これらの経験が契機となり、多国籍の人々とともに働くグローバルな環境で自分を高め、視野を広げていきたいという目標も明確になりました。「成長し続ける私」であるために、自分の気持ちに素直になって挑戦し続けます。
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正木 さくらさん
国際文化学科 4年生(大阪府 上宮高等学校 出身)
父の仕事をとおして幼い頃から建築に慣れ親しんできました。本格的に建築への興味が生まれたのは、2年次に受講した林先生の「イスラームの文化A」の講義で、壮大な建造物や鮮やかなタイル装飾、繊細な内装に心を奪われたことがきっかけです。建築を通じて異文化を学ぶ楽しさに魅了され、もっと深く学びたいと思うようになりました。ゼミでは、美術史・建築史・意匠を軸に関心のある分野を自由に選び、思い思いに研究を深めます。リサーチセミナーⅢでプレモダンとレトロ建築を学んだ経験から、私は「日本のレトロブーム」を卒業研究のテーマに決めました。当時の文化や社会を知らない若者の間で「昭和レトロ」が流行する背景には何があるのか。消費者行動や感情を読み解き、これまで繰り返されてきたレトロブームの本質に迫ります。
私の根底にあるのは「好き」という思いです。これが研究への原動力となっているのは間違いありません。林ゼミの魅力は、自由な学びの環境です。ゼミ生の研究テーマは多岐にわたり、一つとして同じジャンルはありません。だからこそ、互いの発表を聞くことで新たな視野と興味の幅が広がるのです。自分の興味や関心が誰かの学びにつながるかもしれないと考えると、学修意欲は増すばかりです。私はこれまで、おもしろいと思えるかどうかを軸に、あらゆる学びを深めてきました。建築や文化もその一部です。身近なものや事象を学び直すことで、興味は思いがけない方向へと拓けます。一つの関心事から次の好奇心が生まれる学びの広がりこそが、ゼミ活動で得た最大の発見かもしれません。これからも自分の直感を信じて学びを深めていきます。