「京都」と聞くと、日本を代表する寺社仏閣、趣のある町家など歴史的建造物を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
古都のイメージが強い京都は、実は近代建築の宝庫でもあるのです。
このプログラムでは、京都市内に現存するプレモダンな名建築を巡り文化財的価値と商業的価値を共存させる活用方法を考えます。
森本 舞さん
2年生(大阪府 出身)
松井 凜子さん
2年生(広島県 出身)
林 則仁准教授
国際文化学科
[専門分野]美術史、建築史・意匠
「リサーチセミナーⅢ」「プレモダン&レトロな名建築を巡る」プログラムでは、西洋の様式を取り入れた京都に現存する近代の名建築から、それぞれの時代背景や文化的意義を学び、建築の背後にあるストーリーを探究します。そして、国際文化学的な視点から文化財の特徴を分析し、文化的価値と商業的価値を両立させる活用方法を考えます。
フィールドワークを実行するにあたっては、事前準備も重要な役割を果たします。学生はまず4〜5名のグループに分かれ、対象となる建築物に関する情報収集や資料分析を行います。基礎知識を得たうえで、国際文化学的な観点から予備考察を行い、実際の活動に向けた計画書を作成して調査をスタートさせます。
日本文化の歴史的な発展を築いてきたのは京都の先人たちです。明治以降の西洋文化に理解を示し、近代の洋風建築を誕生させたのもまた、京都の人々です。現地では異なる二つの文化を尊重してきた彼らの先駆的な精神を学び、地域や時代の文化的要素が複合的に合わさった建造物から、文化の多様性と複雑さを学びます。フィールドワーク終了後には事後学修を実施し、京都の新たな観光資源の一つとなりうる文化財をどのように活用していくべきかを探ります。
事前学修からフィールドワーク、事後学修へと続く研究のプロセスは、さらに専門的になる3・4年次の専門演習や卒論演習で取り組む研究活動での土台となるでしょう。卒業論文の制作に必要なプロセスを、先に経験しておくことで、論文完成までの道のりがイメージしやすくなり、より積極的に研究活動に取り組めるはずです。研究をとおして磨かれていく調査力や観察力、分析力といった実践スキルは、社会でも必ず役立つと確信しています。
このプログラムでは、実際に建築物を見ながら歴史的な背景や文化的な価値を探究します。建築物のなかでも特に近代の西洋の建築に興味があった私たちにとって、近代の名建築を巡り、建築に関する知見を深められるこの取り組みはとても魅力的に映りました。
フィールドワークの事前学修では、グループに分かれて対象物の情報や資料を集めて分析し、ゴシックやルネサンス、コロニアルといった特徴的なデザインも細部まで学びます。参加した当初は趣味の延長線でしかなかったレトロモダンな建築物も、建てられた時代背景やデザインの特徴、文化遺産としての価値などを掘り下げていくうちに学問的な興味へと変わり、フィールドワーク当日は、同じ様式の建物でもそれぞれに個性があることに気づけました。
今回のフィールドワークをとおして、歴史的な建築の背景や意義を解釈する能力が上がると同時に、設計理念や社会的文脈を理解して作品をより深く分析・評価する力が養われたと感じています。また、建築の歴史や様式の変遷を学んでいくなかで視覚的な感性やクリティカルな視点をさらに発展させ、より広い視野で物事をとらえられるようにもなりました。同じ目的に向けてグループの力を結集した経験も、研究活動や就職活動における大きな強みとなるに違いありません。初対面の学生もいるなか、お互いに協力し合って事前調査を進めていくうちに自ずと結束力が生まれ、フィールドワークを実行した際も活発に議論できました。
これからも挑戦心をもって自分たちの興味・関心を積極的に押し広げ、社会に出てからも役立つスキルや知見を身につけていきたいと思います。
国際文化学科では、学際的な学びを支援するために「リサーチセミナーⅠ・Ⅱ・Ⅲ」を導入しています。学生は1年次前期に、大学の学びを身につけ、1年次後期には、自らの興味や関心にもとづき、専任教員が提供する言語や歴史、宗教、社会体制など「国際」や「文化」に関する学術的なリサーチ方法を学びます。2年次の「リサーチセミナーⅢ」では、さらに多様なテーマや地域を対象に、専門的な学びを提供しています。例えば、京都でのフィールドワークや海外での語学や文化研修、アートやメディアコンテンツの作成などです。また、「リサーチセミナーⅢ」の代わりに自らが海外留学や海外インターンを予定している場合は、「海外研修(異文化交流)」も選択することが可能です。これらを通じて、「多様な他者をつなぐ人材」に求められる素養を身につけていきます。
※「リサーチセミナーⅢ」のプログラム内容は、開講年度によって異なります。
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オーストラリアのメルボルンで語学留学プログラムを経験した後、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で私費留学にトライした髙岸さん。
みんなが意見を交わす自由な雰囲気に、カルチャーショックを受けたといいます。
そのなかで修得したのは英語のスキルと、日本では避けられがちな「自己主張」の姿勢でした。
髙岸 さくらさん
国際文化学科 3年生(滋賀県立彦根翔西館高等学校 出身)
私は2023年に短期留学プログラムでオーストラリアのメルボルンへ1カ月、2023年にカナダのバンクーバーへ4カ月、留学しました。オーストラリアでは、SDGsの観点から動物福祉についてグループワークで学びました。動物に対する国ごとの認識を共有し「日本」を客観的に考える経験は、自分の視野を広げるきっかけとなりました。
2度目の留学先に選んだブリティッシュ・コロンビア大学は、英語力アップをめざす私に最適の環境でした。カナダ文化に関するディスカッションや現地の方にお話をうかがうフィールドワークを通じ、リスニングとスピーキングの力が確実に向上しました。学生主体のアクティビティや友人との旅行など、授業外でもネイティブスピーカーと頻繁に交流し、実践的な英語が身につきました。ただ、最も身に沁みて学んだのは、語学力以上に自己主張が国際交流では重要という事実です。学生も先生も率直に話し合う光景に、衝撃を受けました。多民族国家カナダには異なる価値観の人が多いため、コミュニケーションの際は積極的に意見交換し、お互いを理解する必要があると気づかされました。
留学前の私は自己主張が苦手でしたが、いろいろな人と関わり刺激を受けることで、自分の考えを発信できるようになりました。カナダ留学で印象深いのは、”Vancouver is colorful, and it means interesting(バンクーバーは色とりどりで面白い)”と言われたことです。多様な声が飛び交えば衝突や軋轢が起きるかもしれませんが、同時に相互理解が深まり、新しい考え方も生まれます。自分の意見を伝えつつ相手の意見も尊重し、お互いの価値観を更新する。その営みが本当の多様性かもしれないと教えてくれた留学生活でした。今後は、より英語力に磨きをかけることはもちろん、主体的に行動し、自分らしい人生を歩んでいきたいです。
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藤田 康介さん
国際文化学科 4年生(大阪府 大阪学芸中等教育学校 出身)
カルロスゼミは「外国人労働者」を専攻テーマとしています。国内で外国人労働者が活躍する一方、日本の外国人材受入れ制度は「労働力の搾取である」と国内外から批判を集めており、多くの課題を内包しています。こうした点に問題意識をもち、外国人労働者という切り口から日本の社会課題を理解したいと考え、本ゼミに所属しました。
本ゼミは、学生主体で活動を行うのが特徴です。グループワークやディベートが活発で、さまざまな意見が飛び交い、自分とは異なる視点を多く得られます。課外活動もさかんで、今年は私たちが一から企画して、タイへのフィールドワークを敢行しました。特に印象深いのは、在日外国人の方をお招きしてインタビューを行った授業です。実際にお話を伺うことで、日頃メディアで報道される在日外国人の実情が、いかに現実と乖離したものであるかがわかりました。生の声を聴く大切さを実感し、社会課題の解決策を模索するには、確かな情報を主体的に見聞きする姿勢が不可欠なのだとの気づきを得ました。
卒業論文では「中国人留学生進路選択−中国の過酷な競争社会を背景に−」を主題としました。調査過程では、中国の文献にあたるだけでなく、中国人の友人にもインタビューを行います。当事者から生きた情報を得る重要性を知ったゼミでの経験を大いに活かし、4年間の締め括りにふさわしい卒業制作にしたいと思います。
ゼミ活動を通じて、視野だけでなく関心の幅も大きく広がり、世の中のあらゆる問題や事象に関心をもてるようになりました。それは、学生の挑戦を惜しみなくサポートする先生の存在、主体性を重んじるゼミという環境があったからこそです。何事も恐れず挑戦する姿勢が身につき、大きく成長できたと感じています。