- 教員氏名
- 鈴木 滋(Suzuki Shigeru) 教授
- 専門分野
- 人類学 / 霊長類学
- 所属学科
- 国際文化学科

人類学とは、「人間とはなにか?」という問いに対し、さまざまな視点から人間のありようを探る学問です。私が専門とする霊長類学は、野生のサルの生態や社会を研究し、人類の進化を考察することを目的としています。これまで、屋久島のニホンザル、アフリカ熱帯林のゴリラとチンパンジーを対象に、社会における共存のあり方について研究してきました。また、野生の霊長類には、チンパンジーによる道具を使ったシロアリ釣りのような、文化的な行動があるとされており、文化の基礎にある仕組みについても関心をもっています。さらに、野生のサルの生態学を通じて、国立公園や世界自然遺産などによる自然保護が抱える問題についても考えてきました。研究の中で、ヒトを含めた自然の中にある不思議を読み解いたと感じる瞬間、「自然の慈悲」といわれる経験があります。それこそが私にとっての研究の醍醐味です。
ゼミでは、学生が自然と人との関わりについて、自らフィールドワークを行い、調査を進めます。テーマは学生の関心に応じて設定しますが、ゼミでの発表や討論を通じて、研究の目的やリサーチ・クエスチョンを明確にしていきます。発表では、自ら収集したデータを分析・検討し、意味のある考察へとつなげることが、実りある卒業論文への重要なステップとなります。その過程では、ときに厳しい指摘を受けることもあるでしょう。しかし、卒業論文を完成させたときには、自らの成長を実感できるようなゼミを目指しています。ゼミで身につけた思考方法は、世界のどこで誰を相手にしても通用する力となるはずです。実際に、このゼミから、他大学の大学院を含め、進学する学生も数年に一人ほど出ています。
人類学は、私たちが「ふつう」と感じている人間の行動や社会の中に、たくさんの謎や面白さが潜んでいることを教えてくれます。われわれは家族や友達同士で協力するのみならず、見知らぬ国の人の困難に共感をしたり助けたりしますが、これは人間以外の霊長類では一般的ではありません。ヒトは、なせ自分と異なる文化や価値観をもつ他者と共に生きることができるのでしょうか?すべてが理念どおりに成立するわけではありませんが、その「あたりまえだけれど不思議な」ふつうのヒトの特性をフラットに考えることで、異文化理解や多文化共生の意識を育んでほしいと思います。