ボーダレスな時代においては「グローバル」な感覚が大切といわれます。
それは、単に外国語が話せる、留学経験があるといった表層的な部分ではなく、世界の人たちの自分とは異なるいろいろな考え方を認めながら、自分の考え方を大切にできる姿勢なのではないでしょうか。
グローバルな体験は、自分の知らない世界を知るだけではなく、他者への理解をとおしてこれまで気づかなかった自分について知る機会でもあります。
福井 紗耶さん
国際文化学科 2022年9月卒業(京都府立乙訓高等学校 出身)
島国で礼儀正しい国民性など、日本と似ているところがあり、イギリス英語が好きだったこともあって、交換留学生としてロンドンへ行きました。現地では、大学で観光学を学び、さまざまなイベントに参加する機会もありました。大学の授業は実践的な内容のものが多く、現地の人へのインタビューなどをとおして、英語によるコミュニケーション能力が上がったと感じています。
通常の旅行ではなかなか見ることのないロンドンの人たちの日常的な場面を目にすることも多く、さまざまな国の人と出会い、自分とは異なる立ち位置から見た日本についての話を聞き、これまでとは違う視点で自国をとらえる目を養えたと感じています。日本のことをよく知っている人が多かったのも、新鮮な発見でした。
ロンドンには多彩なバックグラウンドをもつ人たちが生活しています。多様性にあふれた環境で日々の生活を送ることで、いろいろな物事についてこれまでとは違った角度からの見方があると気づきました。身近な例でいえば、日本の商業施設では丁寧な接客が当たり前ですが、現地では業務マニュアルに束縛され過ぎない店舗スタッフと顧客との対等な関係が新鮮でした。また、移民が多く、多国籍、多文化環境のなか、周りの人たちが“日本から来た留学生”という枠組みではなく、一人の学生として、そして何より一人の人間として、私に接してくれたのが印象的でした。
現地では、学生の学びに対する真剣な姿勢や、日本とは異なる仕事に対する考え方に触れました。日本では学校を卒業後は就職するのが当たり前です。しかし、進路にはさまざまな選択肢があり、どれを選ぶかは人それぞれと考える多くの人たちと出会いました。留学前から世界には多様な考え方があると知っていましたが、周囲の人と比べたり、焦ったりすることなく、自分の考えを優先して生きる人を目の当たりにして、驚くとともに「いいな」と感じました。また大学でも、自らの考えや意見を主張するスキルを養う実践的な時間が多くありました。以前の私は、周囲の意見や周りからどう見られるかを意識する傾向が強かったのですが、留学を経験して自分自身の意見や考え方を大事にしたいと考える機会が増えたと思います。
私がイギリスで経験したこと、感じたこと、そして発見できたことの多くは、日本にいたら出会えませんでした。国内だけで過ごしていたのなら、きっと気づけなかったこともたくさんあると思います。そうした日々のなかで、これまで自分で「当たり前」と思い込んでいた部分が変化して、物事をより柔軟に捉えられるようになったと感じています。現在は、留学をとおして得られた英語力を活かし、オンラインの日本語教師をしています。日本語を母語とする私たちが、疑問に感じたことのない言葉の使い方などについて質問されることもあり、改めて日本語の意味に気づく場面も少なくありません。今後は未定ですが、以前の私なら周りを気にしてできなかったことも行動に移せると思います。そして、そのときには英語力や多様性を受け入れる姿勢がきっと活きると感じています。
国際文化学科では、学際的な学びを支援するために「リサーチセミナーⅠ・Ⅱ・Ⅲ」を導入しています。学生は1年次前期に、大学の学びを身につけ、1年次後期には、自らの興味や関心にもとづき、専任教員が提供する言語や歴史、宗教、社会体制など「国際」や「文化」に関する学術的なリサーチ方法を学びます。2年次の「リサーチセミナーⅢ」では、さらに多様なテーマや地域を対象に、専門的な学びを提供しています。例えば、京都でのフィールドワークや海外での語学や文化研修、アートやメディアコンテンツの作成などです。また、「リサーチセミナーⅢ」の代わりに自らが海外留学や海外インターンを予定している場合は、「海外研修(異文化交流)」も選択することが可能です。これらを通じて、「多様な他者をつなぐ人材」に求められる素養を身につけていきます。
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西ヨーロッパ最大の規模を誇るイタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学には、異なるバックボーンをもつ留学生が世界中から集まっています。
例えば、勤勉を美徳とする日本人の考え方とは、どのような違いがあるのでしょうか?
現地学生や留学生との交流を通じて、それぞれの国の文化や生活様式、人生観が見えてきました。
旭 茉優さん
国際文化学科 2022年9月卒業
(京都府 京都学園高等学校※ 出身)
※現・京都先端科学大学附属高等学校
私は交換留学制度を利用して、西ヨーロッパ最大規模の公立大学、ローマ・ラ・サピエンツァ大学に留学しました。同校はイタリア語と英語で授業が展開されていて、豊富な学部・学科から自分の関心ある授業をオーガナイズできるのが魅力です。さらに交換留学生には履修制限がなく、多岐にわたる分野を学べます。私が特に興味を抱いたのは、イタリアの歴史でした。イタリアは長らくヨーロッパの中心で活躍してきた国であり、文学や建築にも大きな影響を与えています。現代まで歴史をたどっていくと、「働かないイタリア人」といわれる理由も見えてきました。
イタリア人に対して「働かない」というイメージをもっていませんか。確かに大型店舗を除く小売店は週末の営業はせず、飲食店も昼休みを設けています。行政のシステムも緩慢で、怠けていると感じるかもしれません。しかしその裏側には、長年の就職難や低学歴問題といった社会的背景がありました。正規雇用で働く人が少なく、賃金もかなり低いのです。そんな厳しい状況にあっても、夕方になればカフェテラスでお酒を飲み、明るく笑いながらおしゃべりに興じる。自由な暮らしだからといって「働かない」と決めつけるのは一方的にも思えます。家族や友人との時間を大切にし、人生を楽しむイタリア人は、勤勉が当たり前の日本人も見習う価値があるのではないでしょうか。
今回の留学で得たのは学びだけではありません。歴史も文化も生活様式も何もかもが異なるイタリアで生活してみて、他者との違いを理解し受け入れる余裕が生まれました。日本で暮らしていると個性を求められる一方で、人にあわせなければいけない窮屈さもあります。世界スケールで見ると、周囲との違いなんてどんなに小さな悩みでしょうか。留学をとおしてグローバルな視野をもつ人と出会い未知の世界に触れ、私の人生観は大きく変わりました。自分らしくあることを大切にしながら、他者との違いを楽しんでいきたいです。
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佐藤 光里さん
国際文化学科 3年生(秋田県立秋田南高等学校 出身)
「大衆文化」を専攻テーマに掲げる杉本ゼミは、映画や音楽、食べ物といった幅広い領域を扱っています。多彩な選択肢から私がテーマに選んだのは「マンガ文化」でした。身近な存在として社会に広く浸透しているマンガは、描かれた当時の社会情勢を色濃く映し出し、社会の流れや文化、歴史なども反映されています。そこを学ぶにあたり、私は海外のマンガ文化に目を向けました。私たち日本人が考える以上に、日本のマンガは海外で高く評価されています。世界中で受け入れられるようになった経緯を調べるうちに、日本文化のなかで普遍的な存在となっているマンガに新たな価値を見出せました。マンガのもつ魅力も再認識し、卒業論文では「日本の少女マンガにおける戦闘美少女に焦点を当てたジェンダー表象」を取り上げます。少女と戦闘は一見すると異色な組み合わせに思えるものの、日本のマンガ文化ではメジャーな組み合わせといえるでしょう。日本の戦闘美少女が海外でどのように享受されるようになったのかをキャラクターの特性から紐解き、世界の文化交流を踏まえた相互的な価値観をマンガ文化に踏襲していければと考えています。
また、ゼミ活動の一環として、映像資料を介したグループ研究も行っています。ファッションやサイコスリラーなどのテーマをグループごとに設定し、複数の映像資料からそれぞれのグループが大衆文化に関するプレゼンテーションを実施するのです。グループ内での意見交換ではさまざまな解釈が飛び交い、構成を決めるだけでもかなりの時間を要しました。しかし、グループワークでの意見共有は、他者理解を深めるだけでなく、新たな価値観を提供してくれる場としても機能します。苦労して完成させた瞬間の達成感は計り知れません。個人の研究では得られない協働力を実感する貴重な経験となりました。